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8to2 竹内公太による福島第一原子力発電所事故関連記事
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■ 10月29日クレーン解体作業中の人身災害について
東京電力によりますと、事故調査が終了し、明日11月7日からクレーンの解体作業を再開するそうです。
原因の調査と今後の対策がまとまり、富岡労働基準監督署に説明もしたとのことです。
 
【事故原因と状況】
一号機カバー作業のためのクローラークレーンを解体するために2台のクレーンを使ってワイヤーとマストを共吊りしていた。(共吊りはワイヤーとマストが不可分のため必要な方法)
その際、ワイヤーと台座を固縛していなかったため、これが落下し吊荷の下で作業していた2名の作業員の方に当たり事故となった。
本来積荷と台座は固縛しなければならない。また、吊荷の下で作業を行ってはいけない
しかしこうした作業方法は以前からも慣習的に行われていた
17名のチームで行っていた作業だが、手順書は簡易なもので、共吊りの際台座への固縛するようには記載されていない。
手順そのものが慣習的に省略しすぎていたので広い意味ではヒューマンエラーといえるが、特に作業員一人ひとりの直接的な瑕疵(カシ)ということではない。
 
【今後の対策】
解体していた事業者に対しては
  ・具体的にワイヤーと台座を固縛する方法を定めてもらう
  ・荷の下で作業しない
  ・荷は仮置きして固縛する
これらを作業手順を変えて改定し、手順書の中に組み込むようお願いする。
また発電所内の全ての同様の作業においてこれを今後徹底する。
 
【負傷された作業員の方の容態】
現在重篤な状況ではなく意識ははっきりしている。しかし本人と家族の意向で詳しい容態は伝えられない。
 
 
NHK横川さんからこの件に関して質問がありました。その際の答弁によると、
 作業された事業者の方はスキルのある方で、過去にも同じ作業をされていたので、手順書も簡潔明瞭だった。 しかし荷を固縛する、台座は一旦下ろしてから作業する、こうした当たり前のことを今後手順書に書いてもらう。 今回のクレーンを扱う際の荷の取り扱いは放射線環境下であるなしに関わらず行わなければならないことである。普通の環境とは違うということは発注者として、皆様には繰り返し繰り返し周知する。
とのことでした。
 
スキルのある方々なのになぜ事故につながるのか、それには固縛しないといった手順の省略があったわけですが、なぜそれが見過ごされるのか。安全第一の空気がきちんとあったのか。
追加で次のように質問しました。
 
Q. 作業方法に問題があるのを目撃した場合の連絡先としての企業倫理相談窓口、企業としての自浄作用を役立てるために大きく掲示すべきでは?
A. 今回のようなケースは不正を報告する窓口の問題ではなく、現場で気がついた人がきちっとやめろ、と中断しろ、と指摘すべきことだと思います。人の命がかかっているのですから。
 
Q. 工期があり、下請けという立場。やめろ、と言えない、あるいは見逃す空気が問題では?
A. そういう気持ちの持ちようが安全を疎外すると思います
 
Q. それを東京電力が強く周知することが新たなプレッシャーを生むのでは?
A. 安全に関わるものは元請、下請け関係なく、その場で言う文化が必要です
 
Q. 東京電力さんのウェブサイトにも、しない風土、させない仕組み、言い出す仕組みについて書かれています。これを徹底させる抜本的な対策は?
A. 仕組みはルールの話ですので、窓口を設けることです。
  風土は醸成するもので、どういう価値観に基づいて作業するか、ある程度時間がかかるが、時間をかけて繰り返し言うことが重要と思います。
  これからも継続してやっていきます。
 
Q. 風土を作り出すための最大限の努力を東京電力さんはすべきと思いますが
A. 難しい部分ですがそういう取り組みをこの10年間取り組んできたつもりです。
 
Q. Jヴィレッジの掲示板に企業倫理相談窓口の連絡先が書かれていない、労働条件についての相談窓口としての資材部の連絡先も小さい これは十分な風土つくりのための努力といえますか
A. 掲示したから風土が変わるものではありませんが
 
Q. やらなければ話しにならないのでは
A. 相談を抱えている人には窓口の連絡先を表示している、入社教育でも悩みとか
  発注者受注者という関係で言い出せない倍にそうした窓口を利用していただくよう周知していく
 
Q. 作業員一人ひとりに周知が難しいわけですよね
A. 基本的には元請企業を通して、周知しますし、それ以外にも掲示物、チラシは有効かと思います
 

掲示物は唯一の窓口だと思います。是非改善していただきたいと思います。
 
下請けというのは、ミスをしたら、作業員はいつ首切られるかわからない、
会社としても仕事がもらえなくなるかもしれない、けれども工期は守らないといけない、
そういうプレッシャーを抱えて仕事している方も多くおられます。
こういう状況は全員一社の社員というような状況に比べて、基本的に小さなミスや不正、事故が隠されやすい状態です。
 
ですから不正をしない風土、させない仕組み、言い出す仕組みというのは、本当に難しいからこそしっかりとした対策をするべきだと思います。
実際私が働いていた時、そうした不正連絡の窓口の存在はおろか、掲示物の説明もとくにありませんでした。そしてマスメディアには緘口令です。
今企業倫理相談窓口にいくつか調査を依頼しているので詳しくはいずれ別の機会に書きますが、会社が重大な不正を隠しているというよりは、
常に元請の顔色を伺ってとにかく自社の作業員にへまをして欲しくない、騒がれたくない、そういう"風土"が圧倒的です。
会社のほうが社員に積極的に不正相談窓口を周知することは考えにくいのです。
ですから私は窓口をしっかり、大きく掲示して周知徹底するよう再三求めています。
もちろんそれがされたからといって、実際に窓口利用されるかはまた別で、問題はもっと根深いと思います。
会社が怖くてそんなの利用できない。
 
けれども、しない風土を本気で作るなら、まずその窓口をしっかりと掲示すべきだと考えます。
どうせ変わらないから、と一歩目を踏み出すことすらしないのは、怠慢だと思います。
川俣さんが「掲示したからと言って変わるわけではない」旨のご発言をされたときはさすがに声が荒ぶってしまいました。
根本的な解決は法律を変えない限り難しいでしょうが、だから何もそこまでしなくて良い、というのは違うと思います。
今回の事故はクレーンの解体作業中のできごとでした。もちろん作業員の方々の身が安全であってほしいですし、
これがもし炉に近い作業での事故、あるいはミスだと、より危険で重大な事態を招くかもしれないと思います。
 
2007年のJR西日本の脱線事故などでは社員の方に対する
過度なプレッシャー(過密な時刻表、日勤教育、それによるミス隠しの常態化)が大事故の原因のひとつだったわけです。
現在かの区間では少しでも危険を察知するとしょっちゅう運転停止したり、徐行したりします。
原発事故を起こした企業として、やりすぎるくらいの安全徹底をして初めて風土作りと言えるのではないでしょうか。
 
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プロフィール
HN:
竹内公太
性別:
男性
自己紹介:
元作業員の視点から何か有意義な記事が書けないだろうかと思い、東京電力さんの記者会見にときどき参加しています。(働いたのは8月の短い間だけです 免震棟の出入り管理で、比較的被曝量の少ない、後方支援のような仕事です 現場で今も高線量被曝しながら懸命に作業されている方々に最大限の敬意を持って、記事を書きたいと思います。
ライター経験は無いので読みづらい点もあるかと思いますが宜しくお願いします。
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