忍者ブログ
8to2 竹内公太による福島第一原子力発電所事故関連記事
[36]  [35]  [34]  [33]  [32]  [31]  [30]  [29]  [28]  [27]  [26
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

注)「福島第一原発での体験」の記事はあくまで私個人の体験と印象です。
 のべ数万人とも言われる作業員の方々それぞれが異なる体験と印象を持っておられると思います。
 情報が不足する中で、私のケースを全体の印象とお取り違え拡散されることのないようお願い申し上げます。
 
 私は免震棟内で後方支援的な作業を行っていました。滞在期間は2011年8月のひと月足らずです。ですから私の見た光景は全体のごく一部であり、浅い理解に過ぎません。
 より高線量の建屋で作業される方や、私とは全く異なる滞在宿、雇用条件の方が大勢おられます。
 

■福島第一原発の体験3
就業初日。γ線被ばく量0.12mSv。
4:30、アラーム設定の一時間前から目が覚めて布団でケータイ見たりする。
指定の下着と靴下を履いて持参の作業着を着る。先輩は携行品は汚染、盗難の危険がある…「絶対取られるよ!」と笑顔で言っていた。とりあえずボールペンのみ持って行って、持って帰ってみることにする。
会社の車でJヴィレッジへ行き、マスク、タイベック、手袋、靴カバーを装備、昼食用のレトルト食品やパン、ペットボトルの水など持って8人乗りのワゴンで1Fへ行く。
20km圏内は地震の影響で地面ががたがたの箇所があり、スピード出しすぎると尻が浮いた。マスクとタイベックで大声でも聞き取りづらい。のであまり喋らない。
~1F~
免震棟に併設された仮設プレハブに入る。扉が3重になっていて、同時に開かないようドアマンが合図を送りあっている(後日自分もこの作業をする)。各部屋で見かける空調機器は外気の進入を防ぐため常に気圧が高めに保つためだそうだ。全面マスクをビニール袋に入れ、APD(線量計)を借りに行く。作業者証のバーコードで誰がどのAPDを借りどれだけ被ばくしたかが管理される。中はピンク色のシートが貼られている。東京電力さんのプレスリリースと同じだ、けど大きく違うのは、たくさん人が行き来してること、空調の音、作業員の声(特に出入り口管理で身体サーベイしてる人の活発な声)、足音、また壁にたくさん掲げられた、全国からの応援メッセージ、など。思ってたよりわいわい、にぎやかな印象だ。たぶん作業場所ではマスクでコミュニケーションしづらいし、作業そのものも大変でそうしたストレスから解放される休憩所だし、水も飲めるし人が多いし、といったところか。
この日はひたすら作業員のマスクのフィルタを交換していた。社長はフィルタ交換するごとに外側のゴム手袋を取り替えろと言っていたので、できるだけ交換する。皆マスクには毎日白テープを貼って名前を書いている。当たり前だが僕らは"匿名作業員"ではない、一人ひとりの人間だ…とかかっこいい台詞をぼんやり考えてた。それにしても人が多い。ひっきりな無しに人が行き交う。建設現場、しかも事故現場の休憩所なんだから当たり前か。今度は何百人もいる中のひとつの歯車だ的なさっきと反対のポエムが浮かぶ。
割と暇なので十人十色の人間観察を楽しむ。日に焼けた精悍な若者もいれば色白でなよっとした人もいる。金髪のすんげーパーマの兄ちゃんもいるが彼はバンドマンだろうか?アウトローっぽい人っているのかなとか思ってたら、通路兼着替え場所で肩から腰にかけて立派な刺青のおっさんを見る。それを背負ってるからといって現役の方だと決め付けてはいけないが、でも話しかける勇気が出なかった。
通販で見ためがね型スパイカメラが欲しくなる。この免震棟内の光景を絵にでも描いたらそれだけで面白んじゃないかとわくわくしてくる。
帰りは来ていた装備をすべて着替えて全面マスクを着用してワゴンに乗る。1,2号機建屋の姿がチラリと見えるが、写真で見るよりずっと巨大だった。
19時頃に旅館に着く。
 
誰が言ってたか忘れたが、原発童貞を捨てるっていう表現は、すごい言いえて妙、近い感情だと思った。(行く前後で身体的に特に変化はないあたりが。もちろんいくつかのDNAは損傷はしているはずだが)
すんごい腹へって夕食がうまかった。
 
 
(続く)
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
持ち込み
福島原発で働く作業員の方々は携帯電話持ち込みは出来ませんか?パソコンはどうでしょうか。
竹内さんはデジカメもって入りましたよね・?
教えてください
渡辺裕 2011/11/12(Sat)01:53:39 編集
Re:持ち込み
(また別の機会に書こうと思ってましたが)
携帯電話はみなさん持ち込んでました。auのCDMA1xは入りました。休憩時に携帯でメール見たりWeb見たりしてる方もいました。なのでテジカメも持ち込めると思います。パソコンは見たことないけどがんばれば持ち込めると思います。
というのも、Jビレッジから昼食や、人によっては道具をビニール袋に入れて持ち込みますので、そして荷物チェックなどもなかったので。建設現場の休憩所と変わらないと思います。
ただ万が一放射性物質が付着してしまうと除せんしないと持って帰れなくなるので、私はいつもさらに小さなビニール袋(冷蔵庫で野菜など入れるジップロックのあれ)を持参して携帯電話を入れていました。
【2011/11/12 03:18】
給料は?
命を危険に晒して高線量の中働いている作業員の方
丸暴手配師の話もありどんだけピンはねされているか知りたいのですが・・一日のうち何時間働けるのでしょうかきちっと線量計っているのでしょうか?
黒塗り大福 2011/11/12(Sat)01:58:31 編集
Re:給料は?
>命を危険に晒して高線量の中働いている作業員の方
>丸暴手配師の話もありどんだけピンはねされているか知りたいのですが・・
他の方の詳しい話はわかりません。続きの記事で書こうとしていますが、社長は日給数千円でのケースを口にしていました。
その辺りを現地取材されているジャーナリストの方もおられるようです。Jビレッジでも作業員へのインタビュー映像ありましたが、少しずつ明るみになることに期待したいです。私はちょっとお金がないので福島まで取材行けません…
私自身は免震棟での作業でしたからおそらく敷地内でも最も低線量の部類です。休憩入れてだいたい九時間いてγ線測定器で0.13~0.17mSv被ばく、日給1万円で深夜や休日は25%増し、寝食は無料。あくまで私の場合です。一次請け企業でありかなり働きやすいケースだと思います。

一日のうち何時間働けるのでしょうかきちっと線量計っているのでしょうか?
場所によって、また作業計画によって働ける時間はまちまちだと思います。例えば東京電力によりますと10月27日に作業中に体調を崩された方には1号機タービン建屋で一日に三時間の電源敷設作業をされていました。
線量計は各作業員うっかりしていなければ借りていると思います。作業中別の場所に置いたりしなければγ線線量計ならγ線被ばく量はわかると思います。
個別の運用実態についてはわかりかねます。
が、それに関連する興味深いニュースを紹介します。
東京電力は7月の海江田大臣発言をうけて3月に線量計を置いて作業した事例がないか調査しました。 詳しい記事は→http://www.asahi.com/special/10005/TKY201110070514.html
この記事の中の231人は元請け及び一次請けの、作業監督者のみへのアンケートです、。この恣意的で不完全な調査を持って東京電力は会見で「線量計を置いたということはないという“事実”がわかった」としており、また、4月以降については調査の必要はないとしています。
【2011/11/12 04:15】
動機
竹内さんが、なぜ福一で働こうと思われた動機を教えていただけないでしょうか?
NONAME 2011/11/13(Sun)22:43:01 編集
Re:動機
まず、当時無職でした。そして電気を使うことへの後ろめたさから解放されたいということもありました。
また、特にネット上で、放射能に関するデマを飛び交わせながら原発推進反対にわかれて言い争っているのを見て、それとは別の回路で学ぶことはできまいかと思っておりまして、
本当に働くかどうか別にして、働くという前提で物事を調べるとより知識が責任ある形で身につくと思いました。
(実際は原発について特別クレバーになれることもなかった)

↑そういうまっとうそうなというか、それっぽい動機はウソではありませんが、一方で
原発で働くと"善い人"になれるかもしれないぞ、というような浅慮も愚かながらありました(いや、まっとうそうにみえる部分こそやはり浅はかですが)。しかもお金ももらえるぞ、と。金がなくて4日くらいで被災地ボランティアを切り上げたことが思い出されます。
また当時28歳の自分が敷地内に行くことが珍しすぎないことがわかるにつれ、
若い人が原発に行っちゃうんだぞ~それが珍しくないんだぞ~と、上の世代に対していじわるく言ってみたい、そういういやらしさもありました。
そういう"弱者の装い"といいますか、これ自分の良くないところだと思いますが、動機の20パーセントくらいあったかもしれません。反省しております。
でも実際そんなに遠いところではなかったし、なにせハロワから行ける、ひとつの仕事です。そんなに特別なことでもないとも思います。何万人も働いて、これからも働くのですから。
(被ばくを肯定するという意味ではありません)

というような迷いがありつつ、海江田大臣の発言の報道がトリガーになり、結局行きました(この話はhttp://8to2.blog.shinobi.jp/Entry/28/にも書いています)。

つまり純粋に金のため生活のために行こうとしていたわけでもなかったのでしょう。そういう不純な動機だからやはり長続きしませんでしたし、急に辞めて会社にも迷惑掛かりました。
いろいろと反省しております。

こうして文章にすると理路整然と考えていたような錯覚に陥りますが実際はもっと混乱していたようにも思います。また言葉にできないもやもやしたものだった気もします。
【2011/11/15 01:12】
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
プロフィール
HN:
竹内公太
性別:
男性
自己紹介:
元作業員の視点から何か有意義な記事が書けないだろうかと思い、東京電力さんの記者会見にときどき参加しています。(働いたのは8月の短い間だけです 免震棟の出入り管理で、比較的被曝量の少ない、後方支援のような仕事です 現場で今も高線量被曝しながら懸命に作業されている方々に最大限の敬意を持って、記事を書きたいと思います。
ライター経験は無いので読みづらい点もあるかと思いますが宜しくお願いします。
バーコード
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]